Abstract | 肺血栓塞栓症pulmonary thromboembolism(PTE)には, 急性と慢性とあるが, その病態は全く異なり, 別の疾患と考えるべきであろう. 慢性のPTEのなかには, 肺高血圧のみを主な病態とする固定した陳旧性のPTEと必ずしも特徴的な症状を示さない, いわば小さなPTEの発生を繰返しながら, 次第に肺高血圧が増強していくタイプとがある. 前者の場合は, 病状が安定した肺高血圧であるため, 原発症肺高血圧症primary pulmonary hypertension(PPH)と誤診されたままでfollow upされている場合も稀ではない. 慢性の場合は, 肺血流シンチや肺血管造影, あるいは深部静脈血栓deep venous thrombosis(DVT)がcausative factorとなる場合が多い. しかし, 急性PTEの臨床像はきわめて多様であり, 血栓塞栓による肺血管閉塞の大きさによって症状は多彩である. すなわち, 全く無症状のものからショックや突然死に至るものまでさまざまであり, 急性PTEは診断困難な代表的疾患とされており, 見落しや誤診が多く, 診断率が低いため死亡率が高い. |