Abstract | アポトーシスは生理的・病理的要因により障害を受けた細胞や不要になった細胞を積極的に排除する機構であり, 生体制御や生体防御に必須の役割を果たしている. 多細胞より構成される生体を正常に維持していくためには, アポトーシスの適正な発現が必要であり, その回避や過剰な誘導は, 癌, AIDS, 神経変性疾患, 放射線障害などの様々な疾患に発展する. 従来, 虚血による細胞死はネクローシスと見られてきたが, ある条件下ではアポトーシスが誘導されることが明らかとなり, 虚血障害の治療法開発に新たな局面が開かれようとしている. アポトーシスは細胞の自殺過程であり, そのメカニズムは全ての高等成熟核の遺伝子にコードされている. その過程は, 1)アポトーシス誘導のシグナル受容, 2)その変換, 伝達と遺伝子発現, 3)蛋白分解やDNA断片化などの実行過程, 4)アポトーシス小体の貧道, の4段階からなる. 哺乳類においてはこの過程は複雑な分子シグナル伝達機構によって制御されているが, その機構内にあるわずかひとつの要素でも活性化されると, 他のすべての要素に活性化が及ぶ性質を持っている. |