Abstract | 「はじめに」 血管内皮細胞は血管内腔面に, その長軸が血流の方向に沿って密に並んでいる一層の細胞群である. 血管内皮細胞の生理機能は大別すると, 障壁としての働きと情報伝達系としての働きがある. 血管内皮細胞は強固に結合して, 血液中の細胞や物質を通過させない. 血液中の物質の血管壁への透過性を制御することにより血管壁と組織の恒常性維持に関与している. 一方, 血液中の変化は血管壁, 組織へ, 組織の変化は血液へ, 血管内皮細胞を介して伝達される. 例えば血流量変化は, ずり応力を変化して血管内皮細胞からの一酸化窒素(NO)産生を変化して, 血管壁のトーヌスを調節する. 血管は単なる導管ではなく, 血液の流動性を維持し, 流血中や血管周囲の変化に応じて内腔径や構築を変化して, 血流の調節に関与するが, そのような血管機能の維持, 調節には血管内皮細胞が重要な役割を果たしている. 「血管内皮細胞による血管機能の調節1)」 血管内皮細胞は, 血栓, 止血, 血管平滑筋細胞のトーヌス・増殖, マトリックスの産生, 免疫学的反応, 炎症, 血管新生などの多くの血管機能において非常に重要な役割を果たしている. |