Abstract | 「背景」 大動脈瘤, 大動脈解離, 外傷性大動脈損傷などを含む大動脈疾患の診療においては, 次のようないくつかの問題点がある. 1)発症直後に血行動態の大きな変化を来しうること(特に破裂など), 2)分枝灌流が障害される可能性があり, いったん発症するとそれぞれが致命的であったり大きな後遺症を残しうること, 3)全身状態が不良でCT, 血管造影などの検査が十分に行い得ない, あるいは検査に搬送することがリスクを伴う可能性のあること, 4)いったん評価したあとで病態が変化することがあること, 5)体外循環, 脳分離体外循環などにより灌流状況が変化しうることなどである. 術中管理では, 脳や腹部内臓の灌流障害が問題となる. 例えば術中に脳灌流をモニタリングするために経頭蓋ドプラー法(TCD), それにかわる眼球超音波法(OUS)1, 2)を用いて脳血流をモニタリングしたり, 近赤外線分光法を用いて脳内酸素飽和度(rSO2)を連続モニタリングしているが, 脳分離体外循環中にrSO2が低下し始めたり, 左心バイパス中に下肢血圧は良好なのに尿量が減少した場合, 解離が弓部分枝や腎動脈に波及した可能性が考えられる. |