Abstract | 「はじめに」循環器疾患の疫学研究によれば, 米国では脳卒中より心筋梗塞の頻度が数倍高いのに対して, 我が国では脳卒中が心筋梗塞の3〜5倍と頻度は逆転している. しかも, 我が国における循環器疾患の推移において, 虚血性心疾患や脳出血は横ばいに近いのに対し, おそらく高齢者の増加に伴い高血圧症と脳梗塞は増加傾向にある(図1). 脳卒中は現在, 死因としては癌, 心筋梗塞についで3位だが, 罹患者数は多く, 寝たきりの最大の原因(全体の約4割強)であり, 総医療費に占める割合は癌についで多く, 単独臓器としては堂々の1位を占めている. そのような状況から, 脳卒中の予防と治療は極めて重要である. 脳卒中の危険因子としては, 高血圧, 糖尿病, 喫煙など種々の要因が知られているが, 高血圧は最も重要な因子である. 実際, 多くの疫学研究において, 血圧値が上昇するほど脳卒中頻度が増すことが示されており1), 脳卒中の予防における降圧治療の必要性は言を待たない. 近年, 多くの大規模臨床試験において, アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I), カルシウム(Ca)拮抗薬ないしアンギオテンシンII受容体I型阻害薬(ARB)の脳卒中の発症ないし再発予防効果が示されている. |