Abstract | 「はじめに」高血圧は左室への持続的な圧負荷に対し, 初期には壁厚の増加が不十分なため, 壁応力は高値となる. しかし, 壁厚の増加により, 壁応力は正常化し, 初期に認められる後負荷不適合は矯正される. すなわち, 心肥大の形成は負荷に対する合目的な適応現象と考えられてきた. しかし, 最近の多くの研究は, 心肥大は生体にとって必ずしも有利な適応ではなく, 心血管系の合併症の危険率の増大を招く有害な反応でもあることを明らかにしている1〜4). したがって, 心肥大が重症化する前に心肥大の退縮をはかることは, 高血圧患者の予後を改善する上で必須の治療戦略である. しかしながら, 高血圧の発症に際し, 高血圧の病期の進展と血中の様々な体液性因子の変化については多く報告されているが, 心肥大に関与する物理的な刺激因子についての検討は少ない. 本稿では, 高血圧患者の心肥大に関与する物理的刺激因子と高血圧患者が左心機能低下に至り心不全を発症する機序とその治療戦略について概説する. 「高血圧性心肥大の物理的刺激因子」図1は両側の腎血管狭窄に伴う高血圧患者の病期進展に伴う心エコー図と心電図の変化を示したものである. |