Abstract | 「要旨」肝類洞圧および肝内血管抵抗の分布については見解の不一致があったが, 改良されたミクロピッペット法ならびに血管閉塞法により, 動物の種差はあるものの, 肝類洞圧は門脈圧と肝静脈圧のほぼ中間値に近いことが明らかとなってきた. 著者らは体循環のmean circulatory filling pressureの概念を肝循環に応用し, 肝類洞圧の間接的な測定法として肝血管閉塞法を確立してきた. 本総説では肝血管閉塞法についてその応用とともに解説した. 摘出灌流肝臓でdouble occlusion pressureあるいはtriple vascular occlusion pressureにより類洞圧を測定して各種血管作動性物質の作用を検討すると, 物質により肝血管の収縮部位は異なり, また大きな種差が存在する. しかしながら, ノルエピネフリンの反応は種差なく, presinusoidの血管を収縮させて肝内血液を駆出させる. このノルエピネフリンの反応は, 運動時や出血性ショック時などの交感神経系の賦活により肝内血液が体循環系に放出させる機序を説明するものであり, 生命維持に不可欠な生体防御反応は多くの種に共通することを示唆している. また, 本法を用いた肝虚血再灌流傷害モデルと肝アナフィラキシィー反応の検討では, 肝静脈抵抗と肝内血液量の関連がみられ, 肝内血行病態が明らかとなった. さらに, 門脈のみから灌流する摘出肝臓で門脈あるいは肝静脈の片方だけを閉塞した時の圧曲線から肝類洞抵抗を推定する試みについても言及した. 肝血管閉塞法は肝内血行動態の解析に有用な方法と思われる. |