Abstract | 「はじめに」近年, Gender-specific medicine(性特異性生物医学研究)という概念が定着し始めた1). 女性ホルモンの抗動脈硬化作用は広く研究されており, 心臓血管外科領域においても動脈硬化性病変であるCABG患者およびAAA患者に対する性差による検討は欧米において数多くなされている. しかし性差による弁置換術症例の検討は欧米も含めほとんどない. 性差により弁疾患に傾向があることや2, 3), 心臓自体が性ホルモンの標的臓器であること4, 5)は以前より示唆されていた. 近年, 大動脈弁疾患と動脈硬化の関連についての報告もされてきている6). このため, 我々は弁置換術症例(大動脈弁置換術:AVR, 僧帽弁置換術:MVR, AVRとMVRの2弁置換術:DVR)に対して性差による特徴と手術成績を検討した. また術前血液粘度と術後脳梗塞の関連についても併せて検討した. 「対象と方法」群馬県立心臓血管センターにおいて弁置換術を施行した患者384名(男性206名, 女性178名)を対象とした. 男女各々で, 年齢, 術前診断(大動脈弁狭窄症:AS, 大動脈弁閉鎖不全症:AR, 僧帽弁狭窄症:MS, 僧帽弁閉鎖不全症:MR), 術式(大動脈弁置換術:AVR, 僧帽弁置換術:MVR, 2弁置換術:DVR), 術前動脈硬化危険因子(高血圧, 高脂血症, 糖尿病, 高尿酸血症, 喫煙)合併の有無, 術前血液粘度(谷口-小川式粘度計), 術後脳梗塞合併率, 院内死亡率を比較検討した. |