Japanese
Title座長の言葉
Subtitle特集 第25回総会パネルディスカッション『生体情報とバイオニック医学』
Authors杉町勝*, 劔物修**
Authors(kana)
Organization*国立循環器病センター研究所, **北海道大学
Journal循環制御
Volume25
Number4
Page341-341
Year/Month2004/12
Article報告
Publisher日本循環制御医学会
Abstract莫大な数の細胞より構成される生体がひとつの生命体システムとして統一的に機能するには高度の制御が必要となる. 複雑な生体制御系についてその全貌の解明は容易ではないが, 生体の包括的な理解のためには避けては通れない問題である. これまでも生体制御系の解明に向けて多くの研究が行われ, 日本循環制御医学会も関連した研究を総括する場として貢献してきている. そのような研究の中から, 生体制御系の一部に限れば, その機能の包括的な解析や医療機器による代替が可能であることが少しずつ明らかにされ, バイオニック医学として発展している. さらに, 欠損した生体制御系の代替や異常化した生体制御系の是正が種々の疾患の治療に有効であることも明らかになってきた. バイオニック医学はその独創的な治療戦略と治療効果ゆえに近年注目を浴びている. 本パネルディスカッションではこの分野における先駆的研究者6人に各分野でのバイオニック医学の取り組みをご講演いただくことにした. 東北大学の吉澤先生には, 心臓のポンプ機能を代替する人工心臓の制御自体にも生体同様の制御が必要で, 特に全置換型では残存自然心臓がないことから繊密な制御が必要であることをお話しいただく. 人工心臓の制御にも自然心臓の特徴であるスターリング特性を利用するものと, 末梢血管抵抗により拍出量を決める1/R制御とが検討されている. 高知大学の佐藤先生には, 迷走神経刺激を介したバイオニック治療により重症心不全ラットの生存率が劇的に改善すること, 硬膜外からの脊髄電気刺激を介したバイオニック血圧制御により血圧の安定化が可能であることをご発表いただく. 特にバイオニック血圧制御は整形外科手術での駆血帯解除直後の急速で高度な低血圧を即座に抑制することが可能であり, 専用の治療装置の開発が進んでいる. 東京大学の相馬先生には, 皮膚からの微弱な前庭神経の非侵襲的電気刺激によって圧反射系の応答に影響を与えられることをお示しいただく. これは確率共振という現象で説明でき, 至適な刺激強度があることも明らかになっている. 東京女子医科大学の平先生には, 難治性てんかんに対して迷走神経への電気刺激が有効であること, 海外では多くの実績がありながら日本ではいまだ厚生労働省の認可待ちであることをお話いただく. 最後に, 宮崎大学の宇野先生には硬膜外からの脊髄電気刺激により神経因性疼痛, 虚血性疼痛が緩和されること, 疼痛抑制の機序は完全には明らかにされていないが研究が進んでいることを紹介いただく. 本パネルディスカッションで示された様に, バイオニック医学の中には既に臨床的に確立された治療法, 実験的に臨床試用されている治療法, さらに実験段階の治療法など, 種々の段階のものが含まれる. しかし, いずれも生体情報を介して生体と相互に作用しながら疾患の治療を行うもので, 生体の制御という重要な機能に介入して行う治療法である. 今後の更なる研究開発によりバイオニック医学が医療として確立し, 多くの分野で治療法として日常的に用いられる日が近いことを期待している.
Practice基礎医学・関連科学
Keywords