Abstract | 「はじめに」2001年7月, 米国において, 体内に完全に埋込むタイプの電磁駆動式完全置換型人工心臓(Abiomed社AbioCor)が世界ではじめて臨床適用された1). 2004年10月1日現在, 臨床適用が14例であり, そのうちの1例は最長512日間の生存を記録した. この成功により, 人工心臓の開発は新しい局面を迎えることになった. AbioCorは, 自然心臓と同様に間欠的な血流パターンを作る拍動型人工心臓である. 拍動型は構造が複雑で容積が大きく, 小柄な日本人や子供には適用しにくい. これに対して, 遠心ポンプなどを使うことによってほぼ一定の血流パターンを作る定常流型人工心臓は, 構造が簡単で小型であり, 効率が高いという長所を持っているので, 溶血, 心房壁吸着, 生体と異なる駆出パターンなどの問題が解決されれば, 将来的に普及する可能性がある. 拍動流型および定常流型人工心臓を開発する上で非常に重要な問題は, 循環制御をどのように行うかということである. 自然心臓を切除せずその働きを補助するタイプの補助人工心臓の場合, 残存する自然心臓の循環制御機能にある程度依存できる. しかし, 自然心臓を切除置換する完全置換型人工心臓の場合, 循環制御はすべて人為的に行う必要がある. 本稿では, 生体情報を利用した完全置換型人工心臓の循環制御に関する従来の方法を解説した後, 循環制御によって心房壁の吸着をできるだけ回避する方法についての著者らの試みを紹介する. |