Abstract | 「はじめに」1965年に発表されたゲートコントロール説が契機となり, 1967年に脊髄刺激療法(spinal cord stimulation=SCS)が始まった. 当初は椎弓切除を行って脊髄背面にプレート型電極を置いていたが, やがてカテーテル型電極を経皮的に硬膜外腔へ挿入できるようになり安全性は向上した. しかし, 適応すべき痛みが分からないまま様々な痛みの治療に利用されたため, 治療成績は下がってしまった. それでも1990年頃にはSCSは神経因性疼痛と虚血性疼痛の治療に有効であることが分かり, 見直されるようになった. 本邦では1992年に保険診療が承認されたものの, 今なおそれほどには利用されていない. 体内に刺激装置を植え込むことへの抵抗感, 刺激装置が高価であることも関係しているであろう. しかし, 普及しないことの大きな理由は, 臨床成績の科学的根拠が強固でないこと, また, 鎮痛機序が明らかになっていないことであろう. 最近, 欧米では前向き無作為比較対照研究が行われ, SCSは痛みを和らげるだけでなく, 生活の質を改善し, 費用効果にも有益であることが示されている. また, 基礎研究によりSCSの鎮痛機序が明らかになってきた. そこで, 我々のやり方を紹介し, これらの新しい知見についても述べてみたい. SCSの適応となる痛みを選別する 神経因性疼痛と虚血性疼痛がSCSの適応であり, 侵害受容性疼痛はSCSの適応ではない. また, 神経因性疼痛であっても, 神経損傷の部位, 原因, 程度によりSCSの効果は異なる. SCSの適応となる疼痛疾患を有効例の多さで分けて表1に示した. |