Abstract | 「はじめに」骨の中にある骨髄や骨の周囲を取り囲んでいる骨膜には間葉系幹細胞と呼ばれる幹細胞が存在する. この幹細胞は種々の細胞へと分化し, 特に骨を形成する骨芽細胞や関節軟骨の構成細胞である軟骨細胞へ分化するのはよく知られている1, 2). しかし, これらの報告に加えて, この数年思いもつかない細胞へ分化する事が知られてきた. これらには, 心筋細胞, 血管内皮細胞, 神経細胞, 肝細胞等が含まれる(図1). もし, このような細胞への分化を制御出来れば, 種々の組織再生治療へとつながり, まさに夢の医療となる可能性を秘めている. 本稿では, この間葉系細胞についての我々の研究成果ならびに最近の動向について概説する. 幹細胞とは 幹細胞(stem cell)とは簡単に定義すると, 自己複製能を有し, さらに種々の細胞へ分化する能力を持った細胞である. 当然発生初期にこの幹細胞があり, embryonic stem cell(ES細胞)と呼ばれている. 1998年にヒトES細胞を取り出し, 培養増殖できたことが報告されて将来の再生医学への応用が期待されている3). 現在国際的にNIHに登録されているようなES細胞の保持機関が14機関ある. 日本におけるヒトES細胞の樹立に関しては京都大学の再生医科学研究所が樹立の確認を文部科学省から確認を受けている. 通常使用されうるES細胞は他人の細胞由来であり, この細胞を用いての移植治療は, 免疫抑制剤等を使用しない限り移植された細胞は拒絶される. |