Abstract | 現在酸素は大気中に20.9%という高濃度で存在するが, 地球上に生命が誕生した当時はほとんど存在せず, 数十億年をかけて徐々に増加してきた(図1). 生物進化は, 一面でみると生物がこの酸素濃度の増加に適応する過程であった1). 一部の生物は, 酸素分子を呼吸の電子受容体とすることで多大な生化学エネルギーの産生を可能にし, また酸素を使った酸化酵素反応や酸素添加酵素反応により種々の代謝産物を生み出すようになった. それが好気性生物であり, そのシステムは大変効率がよかったため, 好気性生物が広く繁栄するにいたった. しかし, 酸素はその高い反応性ゆえ, それを利用する生物を, その細胞成分が非特異的に酸化される危険にさらすこととなった. つまり, 酸素を利用することは, 生命維持にとって利益も高いが, 同時にその存在自体をも危うくする可能性を持つ, いわば両刃の剣なのである. そのため, 好気性生物は, 酸素や酸素分子から派生する反応性の高い化合物, つまり活性酸素やフリーラジカル(表1)を消去するシステムを持ち, 常に酸素傷害(酸素ストレス)を最小限に押さえる努力をしながら酸素を活用している. そのシステムの主なものが, スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼなどの酵素群であり, ヘモグロビンやセルロプラスミンなどの金属イオンをキレートするタンパク質群であり, またビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質群である. |