Abstract | 「はじめに」近年の分子生物学の発展に伴い, 薬物の体内動態を担う種々の蛋白質の機能解析が進んできた. それに伴い最近の薬物動態学の進歩は著しく, かつ基礎における薬物動態研究と臨床における薬物動態研究とが融合できるようになり, 多くの臨床におけるブラックボックスが明らかになりつつある. 循環器領域においては薬理作用がシャープで, 有効安全な治療濃度域が狭い薬物が多い. そのため一般にその適正使用が難しいことが知られている. したがってより慎重な投与が求められると同時に薬物の体内動態の特徴を生かした薬物療法の実施が求められる. また循環器疾患としては一般に高血圧, 心不全, 虚血性心疾患, 不整脈などに分類されるが, 同系統の薬物が疾患により使い分けられ, その使用法がより難しい. そこで, 本稿では薬物系統別に, 特に薬物体内動態からの個々の薬物の特徴と使用上の注意点について, その考え方について記載する. 薬物体内動態の考え方薬物は基本的には吸収分布代謝排泄という過程を経て体内に入り体外へと消失していく. 薬物の体内からの消失に関しては主として腎より未変化体で排泄される場合と肝などで代謝され腎あるいは胆汁中へ排泄される場合とに大別される. 前者は腎排泄型薬物, 後者は肝代謝型薬物と言う. 一般に薬物の物性として水溶性の高い薬物では腎排泄型の薬物が多く, 反対に脂溶性の高い薬物では未変化体では排泄されにくいため, 代謝を受けて体内より消失する場合が多い. |