Abstract | 「はじめに」心不全は, 心筋梗塞, 高血圧, 弁膜症, 心筋症などすべての器質的心疾患の末期像である. 高血圧, 糖尿病, 高脂血症などのリスクファクターから心疾患を発症し, 心不全から最終的には死に至る. 心不全に陥った心筋では, リモデリングとよばれる心筋の構築機能変化がみとめられるが, その形成進展には交感神経系やレニンーアンジオテンシン系などの神経体液性因子の活性化が重要な役割を担っている. さらにTNFαなどのサイトカインも密接に関与している. 近年, 従来から知られている虚血再灌流傷害ばかりでなく, 不全心筋においてスーパーオキサイド(O2-)やヒドロキシラジカル(OH)などの活性酸素が増加することが明らかにされ, 心筋リモデリング心不全の形成進展メカニズムとして注目されている. 本稿では, 心筋障害における酸化ストレスの役割について概説する. 心不全における活性酸素の生成 心不全においては, 心筋における活性酸素の産生が亢進する. スピントラップ剤であるDMPOによってO2-を捕捉し, 電子スピン共鳴(ESR)法を用いてそのシグナルを検出することにより, O2-を直接定量することが可能である. この方法を用いて心筋のミトコンドリアでのO2-産生を測定すると, 不全心筋ではO2-産生が有意に増加している. 一方, ミクロソーム分画でのO2-産生には差がなく, 細胞質分画ではO2-産生は検出されない. したがって, 心筋における活性酸素の産生源には, ミトコンドリア電子伝達系, NADPHオキシダーゼ, キサンチンオキシダーゼなどがあるが, 不全心における活性酸素の主要な産生源はミトコンドリア電子伝達系であると考えられる1). |