Abstract | 循環管理にコンピュータを使用する試みは, 1960年代後半にアラバマ大学で開発されたシステムが最初であろう1). 当時はマイクロプロセッサが登場する以前の時代であったが, 心臓手術後の患者管理をコンピュータ化するために, ミニコンピュータを使用した大がかりなシステムが開発された. このシステムには, 血管拡張薬をコンピュータ制御で投与して血圧を自動調節する機能が実装され, 約400名の患者に使用された. また, コンピュータを使用して循環動態や血液ガス分析の結果などを収集記録保存する機能が組み込まれ, 現在の自動記録システムの先駆とも言える先進的なシステムであった. ミニコンピュータの時代からマイクロコンピュータ(マイコン)の時代になると, コンピュータの専門家でなくてもプログラミングや応用システムの構築ができる環境が提供された. 8ビットマイクロプロセッサを使用したマイコン製品が市場に登場した1970年代後半から1990年代にかけては, コンピュータを使用した循環管理の研究が最も盛んに行われた時期であった. コンピュータによる循環管理のターゲットは, 血圧コントロールを目的とした血管作動薬のクローズドループ投与システムが中心であった. 対象となったのは主として心臓手術周術期患者で, 観血的動脈圧を入力信号として, コンピュータでポンプの注入量を計算し, ニトロプルシッドやニトログリセリンなどの血管拡張薬を投与する研究が行われた2-5). 発表された論文では, 医師や看護師による手動の血圧管理と比較して同等あるいはそれ以上の良好なコントロールが可能であったと報告されている4, 5). |