Japanese
Title司会の言葉
Subtitle特集 第14回循環器セラピューティック・フォーラム『冠動脈硬化の内科治療』
Authors伊東春樹
Authors(kana)
Organization心臓血管研究所付属病院
Journal循環制御
Volume26
Number2
Page99-99
Year/Month2005/6
Article報告
Publisher日本循環制御医学会
Abstract冠動脈硬化症は言うまでもなく循環器領域の代表的疾患であり, 治療の対象としては最も重要な疾患の一つである. 代表的治療である冠拡張薬やβ遮断薬による薬物療法は最も歴史の古いものであるが, 薬物に反応する正常な血管や心筋に対する作用を介しての治療であり, 動脈硬化性病変自体への介入ではなかった. 同じく古い歴史を持つ冠動脈バイパス手術は, 静脈グラフトから動脈グラフトヘ, またon-pumpからoff-pomp手術へと何回かの大きな進歩をとげ, 薬物療法では予後不良の例に対する標準的な治療となっているが, これも冠動脈病変自体に対する治療ではなく, 経皮冠動脈形成術(PCI)とともに, ある意味では姑息的な治療である. さらにこの20年間, 爆発的にその頻度を増したPCIは「狭いところを広げる」という患者にも理解しやすい理屈や, その手技は, 簡単ではなく難しすぎることもない, 循環器医のモチベーションをかき立てるちょうど良い難易度であり, いわゆるNew devicesの登場とともに, 益々のその数を増やしつつある. しかしながら, PCIの生命予後に対する効果は限定的であり, 現在の施行件数の多くを占める慢性の虚血性心疾患に対する待期的PCIの生命予後に対する効果には懐疑的な報告が多い. では冠動脈硬化症に対する「根本治療」とは何をさすのか. それにはまず動脈硬化性病変の病因に関する知見が重要なことは言うまでもない. 他の多くの疾患と同様, 遺伝的要因と環境要因, すなわち冠危険因子に対する介入こそが, 一次予防および二次予防にとって極めて重要である. 同時に動脈硬化の伸展や退縮に関わる因子についての研究は, 冠動脈疾患患者に対する根本的治療につながると考えられる. 運動不足のような人間の住む環境の変化が惹き起こす生活習慣の変化が, 動脈硬化性疾患を増やしていることは万人の認めるところであり, それの是正が予防と治療に最も有効であることも事実である. 動脈硬化に関する最近の大きなパラダイムの変化は, それまで「加齢による"生理的な"変化」「老化現象」などと言われ, 臨床レベルでは半ばあきらめられていた病態を, 「血管の炎症」として理解し, 介入できるようになったことである. これにより抗動脈硬化作用をもつ薬物や, 治療手段としての食事療法や運動療法の重要性が, その理論的背景の確立とともに重要視されつつある. これらの治療法はPCI等と比べると地味であり, いままでも脚光を浴びてきたものではないが, 直接冠動脈硬化の原因に介入し, また患者の生命予後の改善に直結した治療法として, 今後その重要性はさらに増すと考えられる. 今回, 薬物治療の新しい考え方, 食事療法や運動療法の有用性などについて, 動脈硬化の発症機転に関係するmetabolic syndromeに関する最近の知見, 現在のPCI治療の限界とその対策などを含めて, 各分野の第一人者の方々にお話しをしていただくこととした.
Practice基礎医学・関連科学
Keywords