Abstract | 冠動脈疾患の一次予防や二次予防において, 動脈硬化の進展阻止は本質的な問題である. 最近, 運動療法が動脈硬化の進展阻止および退縮に有用との報告が相次いでいる. 図1は比較的程度に低い冠動脈狭窄病変に着目し, 心臓リハビリテーション施行群と通常の薬物療法群に無作為に分類, 1年目と5年目に肝動脈造影にて狭窄率の推移を見たものである. 1年目には両群間に差はないが, 5年目では心臓リハビリテーション非施行群の狭窄度は進行し, 心臓リハビリテーション施行群では不変ないし低下傾向を示しており, 両群間に有意な差を認めた1). 同様にSchulerらは運動療法を行うと行わない群に比し有意に動脈硬化性病変の退縮が多く進展が少ないことを報告している2)(図2). 冠動脈疾患に対する運動の効果としては, (1)動脈硬化予防, (2)血栓形成予防, (3)内皮機能改善, (4)自律神経機能改善, (5)抗虚血効果, (6)抗不整脈効果, 等があげられている. 以前より血管拡張能が良いほど心血管イベントが少ないことが報告されており, Schachingerらはアセチルコリン誘発性血管拡張能, 寒冷負荷による収縮, 流量依存性拡張, ニトログリセリンによる非特異的血管拡張, すべてに於いて拡張能が良いほど心事故が少ないと報告した3)(図3). 中でも内皮依存性の血管拡張能の低下は動脈硬化性病変の発症機転の一つとしても重要視されている. |