Abstract | 伊東 それでは総合討論を始めさせていただきます. 最初にmetabolic syndromeというのは, 冠疾患の非常に強力な危険因子であり, その1つ1つは程度が軽くても, 複数持つことによって, それらが相加的というよりむしろ相乗的に悪さをするのだというお話でした. 我々は総コレステロールが高いとか, LDLコレステロールが高いということが非常に危険なのだということを製薬会社さんから教育を受けておりまして, 例えば死の四重奏には必ずそちらも入ってくるように思うのですけれども, このmetabolic syndromeの中にはそれが入ってきていませんね. 低HDLは入っているのですけれども. その辺のところをちょっと解説していただければと思います. 木下 metabolic syndromeに関して最初に言い始めたのはDr. Reavenで, この時にはsyndrome Xという言葉で説明されたわけです. その時に我々がびっくりしたのは, 当然高コレステロール血症でと思っていたのですが, 彼はそうではなくて, コレステロールを含まずに, 低HDL血症, 高中性脂肪血症を含む概念を出してきたわけです. その時は皆「えっ?」と思ったわけですけれども, 今になってみると, さっき言いましたインスリン抵抗性, もしくは内臓脂肪蓄積の概念をうまく表わしていたわけです. 実際, コレステロールが高いというのは心疾患の非常なリスクであることは事実ですし, それを改善すれば心疾患が減ることも事実です. ただ, 循環器をやっておられる先生から昔よく「心疾患をおこす人に高コレステロール血症の人は少ない」と言われましたね. 特に日本人では, HDLが低いとか, 中性脂肪が高いとか, そういった因子が循環器のリスクになっているのではないかと思います. それを今になってちゃんと一元的に説明したのがmetabolic syndromeではないかと私は思っております. |