Abstract | 心臓麻酔に関する本は今日多数あり, その分量は読破するには困難さえ覚える. なかでも実際に明日からの臨床に役立つものはせいぜい200頁位のコンパクトにまとめられていなければならない. 心臓麻酔, 特に体外循環症例に実際に接する時, いままで麻酔科医が体外循環中の生理, 仕組みを理解して, 術者, 体外循環技士に直接注文をつけ, その管理に参加するといったことはむしろ少なかったように思われる. その理由として各部所の分業化が揚げられるが, 術中の体液管理という視点に立てば, 麻酔科医が体外循環中の管理を放棄すれば, その前後がいくらできても全く意味を持ち得ないのである. 体外循環中には生体はドラマチックな変化を伴うのである. 従来まで体外循環に関する書籍は, 対象が外科医, 臨床工学士であることが多く, その量も過大で麻酔管理というものもあまり考慮されていなかったと思う. 今回紹介する「人工心肺の知識」には, 副題として「麻酔科医に必要な」と加えられており, A5版160頁にまとめられている. この量ならば日当直で忙しくなければ1日で読める. 内容は13名の分担執筆であるが, 外科医, 臨床工学士も加わり, それぞれの立場をフルに活用して説明が続く. 全体は10章となっている. 人工心肺の基礎知識では, 東京女子医大での実際のガイドラインがわかるようになっている. 初期プライミングや併用薬剤で施設により異なることもあるが, おおむね受け入られる内容となっている. 人工心肺の原理の中では, ローラーポンプ, 遠心ポンプや静脈貯血槽にはハードシェル型, ソフトシート型の紹介があり, 各施設ではすでに決まっているためその特徴と注意点のみ確認すればよい. |