Abstract | TEEの有用性における報告は本邦でも多く, 当初は心臓外科手術における空気の排除や心機能把握に重点が置かれ, 肺動脈カテーテルとの優劣がよく論議されたが, 現在は心臓外科手術の診断と治療の唯一のモニタリングとしての価値が高くなってきた. 代表的な事例としてTEEによる僧帽弁形成術の評価は, 最もよく行われており, 現在の必須事項と考えられている. MRの逆流の場所や逸脱部位を同定することはomniplaneの発達により容易になり, 詳細な部位診断が可能となってきた. 経胸壁心エコーではリアルタイムの三次元心エコーも登場したが, TEEによって描出される画像の質は高く, 内科領域においても術前診断にTEEを試行している症例も多い. TEEにおいてはまだリアルタイムの三次元心エコーは市販されていないが, off Lineにより10分程度で画像をつくることは可能となり, 実際手術室での臨床応用の報告もある. TEEの弁形成術の手術手技への補助診断の役割が高まってきており, 大動脈弁形成術や大動脈弁狭窄症の部位診断や試行手術のclinical decision makingに必須なモニターとなってきている. 一方, 冠動脈外科の流れは人工心肺を使用するon PUMP CABGから人工心肺を使用しないOP-CABに移行している. 欧米においては冠動脈吻合の確実性もあり, on PUMP CABGもまだ多いが, 日本では50%をはるかに超えて, 100%に近い施設もある. 当初TEEのCABGの大きな役割は, 人工心肺使用による脳障害を予防することであった. 動脈硬化病変を見つけて大動脈カニュレーションサイトやOPCABへの術式を変更することを推奨するのがTEE診断の最重要課題であった. |