Abstract | 去る2005年6月2日〜4日にかけて神戸市において, 日本麻酔科学会第52回学術集会が愛媛大学新井達潤会長のもと開催された, 神戸という日本のどこからでもアクセスが便利であるという立地条件も手伝ってか1200題をゆうに超える一般演題の数にまず圧倒された. また, 港町で古くから日本の玄関である神戸にふさわしく, アジアを含む海外のスピーカーによる招請あるいは学術, 教育講演が目立ち, しかもバラエティーに富んでいた. 新井会長の言葉どおりまさしく"世界的視野から日本の麻酔科医のあるべき姿, 進むべき方向"が示唆されており総じてすばらしい学会であった. 各論的には, 麻酔科の抱えるマンパワー不足の多角的考察とその解決法が討論されたシンポジウムと女性麻酔科医の活躍の場を展開する必要性が論じられたシンポジウムの2つを拝聴し, 手遅れにならないうちに今こそまさしく麻酔科の労働環境を整え, 麻酔科医の存在価値を高め, 将来性があり魅力的な麻酔科医像を確立せねばならないという感を強くした. 麻酔科は元来手術麻酔を基盤とし, 循環器医学, 救急, 集中医療学, ペインクリニック, 緩和医療学, 新生児, 周産期医療学, 手術医学, 感染対策医療学, 輸血学にいたるまで数々の分野の発展や人材の輩出に寄与してきた. しかし, その麻酔科母体が一部の施設を除き手術麻酔を担当する人材不足で危機に瀕している現在, 逆にこれらの麻酔科関連分野からの援助を得て人材交流や派遣を確立する必要性があるかもしれないと感じたのは私だけであろうか. 麻酔科の役割としてプライオリティの高いものに気道管理教育がある. この点についても学会で十分な配慮がなされていた. 困難気道セミナー, 気道管理の新しいストラテジーや工夫のセッション, 救急救命士の気道教育, Dr. Hendersonによる安全気道の基調講演と非常に充実していた. 気道管理教育を標準化し広めていく船頭役を麻酔科医が務める必要性をあらためて痛感した. 個人的ではあるが, 日本心臓血管麻酔学会経食道心エコー(TEE)委員の一人として, 女子医大の野村教授の企画, 構成による, TEEワークショソプを行ったが, 一昨年から施行され始めた日本周術期経食道心エコー試験(JBPOT)のせいもあり非常に盛況であった. 場を提供してくださった会長に感謝すると共に, 麻酔科医が小児循環器学や循環器内科学におけるこの分野においても教育的立場が取れるよう努力していく所存である. この他, まだまだ語り尽くせないほど魅力的なセッションを見聞きしたが紙面の都合ですべて報告できないのは残念である. 結びに, このようなすばらしい学会を開催された新井会長をはじめとする関係各位にお礼を述べると共に感謝の意を表したい. |