Abstract | 心筋梗塞が起きた場合, 心筋障害を出来る限り小さくするために, 閉塞した血管を再度開通させる処置が行われる. 組織を壊死させないため再灌流は不可欠ではあるが, 再灌流により更なる損傷と炎症発症の原因となることがある. 本論文では, フィブリン由来ペプチドであるB免42の新たな抗炎症効果について検討されている. Bβ15-42は, フィブリン断片N末端のジスルフィドknot‐II(フィブリンE1断片の類似物質)と競合して血管内皮カドヘリンと結合するため, 白血球が内皮細胞単層を通して移動することができなくなる. ラットでの急性および慢性の心筋虚血再灌流障害モデルにおいて, Bβ15-42は白血球の浸潤, 梗塞サイズ, 梗塞後の障害の形成を大幅に減少させた. また, フィブリノーゲン産物が心筋虚血再灌流障害を引き起こすことは, フィブリノーゲンをノックアウトしたマウスにおいても検討されおり, ノックアウトマウスにおいては梗塞のサイズは大幅に縮小した. 以上, フィブリン断片, 白血球そして血管内皮カドヘリンの相互作用が, 心筋障害および再灌流障害の病因に関わっていることが示唆された. |