Japanese
Title循環制御に最も重要かつ長い歴史をもつ自律神経研究の冬の時代が今終わろうとしている
Subtitle巻頭言
Authors今泉勉
Authors(kana)
Organization久留米大学医学部第三内科学
Journal循環制御
Volume27
Number1
Page1-1
Year/Month2006/3
Article報告
Publisher日本循環制御医学会
Abstract私は長いこと神経調節による循環調節を主な仕事としてきたが, つい最近までこの分野はあまり日が当たらない分野であった. この方面の研究者は殆どいなくなり, また研究費も少ない. その理由の一つとして中枢が神経調節に大きな役割を果たすので, 理解が困難なこと, および関係する薬剤の開発が大きく遅れていることがあげられる. 例えば高血圧の病態には交感神経系とレニン-アンジオテンシン系の二つの系が重要であるが, 治療薬で目覚ましい発展を遂げたのはレニン-アンジオテンシン系阻害薬であり, 交感神経系の調節に関係する薬剤は殆ど日の目をみていない. α遮断薬は使いにくいし, β遮断薬の使用頻度もあまり高くない. 新薬も殆どでてこない. これは心不全にとっても同様である. β遮断薬以外の中枢性の交感神経抑制薬(例えばクロニジン)は心不全の予後改善効果をもたらさなかった. このように現時点では自律神経の調節薬は医療の現場であまり用いられていない. しかし, この傾向は今後も続くかといえば, 必ずしもそうではないと思う. 私は循環制御に最も重要かつ長い歴史をもつ自律神経研究の冬の時代が今終わろうとしていると思う. 例えば, 動物では心拍数に反比例して寿命が決まっていることは周知の事実である. ヒトは例外で, 恐らく医療の影響と思われるが, 心拍数に比して長生きをする. それではヒトでは心拍数と寿命が無関係かといえば, そうではない. 頻脈のヒトは寿命が短いことが科学的に実証されているし, 我々も日常診療で実感するところである. 又, β遮断薬はその徐脈作用に応じて予後を改善するし, 狭心症には徐脈効果が期待できない内因性交感神経刺激作用を有する薬は用いない. メタボリックシンドロンに関する話題は今大流行であるが, 脂肪細胞から分泌されるサイトカインが中枢に作用して交感神経を賦活化し, メタボリックシンドロンの病態に大きく関与する可能性は, 自律神経を研究する研究者にとって魅力ある仮説である. 今後このような視点からメタボリックシンドロンの治療薬が開発されるかもしれない. 最後に, 日常臨床診療において, 失神発作を主訴に来院する患者は非常に多い. 失神の診断, 治療は循環調節機構の理解なくしては出来ない. 循環調節機構の理解が苦手なので, 失神患者の診断に何から手をつけてよいのか分からない. その証拠として, 多くの失神患者はまず脳外科や神経内科に診てもらうことが多く, 脳のCTが撮影される. しかし, TIAや脳梗塞が失神発作を来すことは殆どない. そこで患者は医療機関をたらい回しにされる. または, ほっておかれる. すべての医師が循環調節機序を理解し, 診断, 治療に当たることができるようにするのが私の役目と思っている.
Practice基礎医学・関連科学
Keywords