Abstract | 現代の疾病構造をみると, 社会環境の変化と共にその構造は大きく変化している. 心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患と糖尿病の重要性が急速に増加し, 国民の健康を障害する大きな要因となっている. メタボリックシンドロームでは個々の危険因子は重症ではない場合においても, 危険因子を重積することにより, 動脈硬化を形成し易いことが特徴である. その診療上のターゲットは虚血性心疾患や脳血管障害のみならず糖尿病の発症予防である. 動脈硬化性疾患や糖尿病は加齢と共に発症するが, その基礎には遺伝的素因および環境要因が重要であることはいうまでもない. この遺伝的素因と環境要因により, 糖尿病, 高脂血症, 高血圧, 肥満症から心血管事故を発症する. 危険因子の重複はフラミンガム研究より, 心血管事故に最も密接に関連する病態として注目され, マルチプルリスクファクター(危険因子重複)症候群あるいはメタボリックシンドロームの概念へと発展してきた. 各々の危険因子単独の診療という枠を超えて, マルチプルリスクファクター症候群あるいはメタボリックシンドロームという一つの疾患単位を意識した診療により, 診療ターゲットは明確となり, より質の高い診療が展望される. |