Japanese
Title司会の言葉
Subtitle第15回循環器セラピューティック・フォーラム『睡眠呼吸障害治療による心血管疾患の改善』
Authors三宅良彦
Authors(kana)
Organization聖マリアンナ医科大学循環器内科
Journal循環制御
Volume27
Number2
Page95-95
Year/Month2006/6
Article報告
Publisher日本循環制御医学会
Abstract睡眠時呼吸障害は生体へ様々な影響を及ぼすが, なかでも高血圧, 心不全, 虚血性心疾患との関連性は強く, その機序や因果関係の解明が徐々にではあるが進んでいる. 明確な症候を伴う睡眠時無呼吸症候群の罹患率は男性で約5%, 女性で数%といわれるが, 軽症な睡眠時呼吸障害患者はこれよりはるかに多く, 循環器診療を行ううえでは常に念頭におかなければならない病態である. しかし, 我が国における睡眠時呼吸障害の診療は, 一部の施設で十数年以上前から行われてきたが, 欧米に比べ遅れをとっていた. 2003年2月のJR山陽新幹線での居眠り運転報道などを契機にして, 本疾患に対する市民の認識度が高まるとともに, 検査や診療を受ける患者数が増加し, 専門医療施設の新規開設や専門病床の確保, 増床が急速になされるようになった. また既存の睡眠関連学会や研究会の活動が活性化するほか, 睡眠呼吸障害の臨床を扱う研究会もいくつか新たに発足した. 米国においては, 本疾患による大事故が社会問題となり, その対策に向けての研究が10年以上も前から行われている. そして米国睡眠障害調査研究委員会が1993年に"Wake Up America"と題した報告書を作成したが, それには多くの交通事故をはじめ, スリーマイル島やチェルノブイリの原発事故, スペースシャトル, チャレンジャーの爆発事故も睡眠呼吸障害の関与であったと結論づけるなど, 研究面でも臨床面で我が国のはるか先を歩んでいた. しかし, 前述したように, 我が国の最近4, 5年の進歩は目覚ましく, 疫学, 病態や機序, 様々な検査方法, 有効性の高い治療方法など研究や検討が進められている. 我が国の民族の骨格や生活習慣などは欧米と大きく異なるため, 本疾患の疫学データは欧米のそれを準用することはできず, 我が国独自のデータ蓄積が必要であるが, 米国に対比できるものが揃いつつある. これによってさらに検討, 解析が進むであろう. 検査方法に関しても, 専門診療施設の増加や新しい検査法の開発に伴って, より簡便でかつ精度の高い検査法が選別されるようになった. 装着される多数の電極やセンサーに工夫がなされ, また解析時間を短縮させるソフトの開発など, 検者も被験者も大きな期待を寄せている. さらに, 現時点では検査の施行と解析は専門の医師や技術者が行っているが, 誰にでも簡易に施行できるような検査システムの開発も望まれる. このように研究も診療も広がりつつあるなか, 本講演では, 睡眠時呼吸障害と強い関連がある高血圧, 心不全, 虚血性心疾患のそれぞれについて, 第一人者の先生方に講演していただいた. 現時点でのデータ, その解釈が詳細に述べられている. 不整脈に関しては, いまだ本障害との関連性の有無が見えてこない. 是非, これから深く追求していただきたい分野である. Metabolic syndromeは心血管疾患の悪化要因であり, 当然のことながら睡眠呼吸障害と深い関連性がある. この比較的新しい概念であるmetabolic syndromeとの関連性について, 本講演で現時点での評価と認識を見極め, 今後の動向を見据えていただきたい. 睡眠呼吸障害の研究と診療は, 進歩の加速がすさまじい. これを牽引しておられる専門の先生方の講演内容を吟味し, 把握し, これからの睡眠呼吸障害の研究や臨床に役立てていただければ幸いである.
Practice基礎医学・関連科学
Keywords