Abstract | 緒言 Pulse wave analysis(PWA)は, 脈波の持っている情報を病態の診断や評価に役立てることを目的とした波形解析を意味する. そもそも近代的診断機器が登場する以前, 脈の触診は重要な診断技術であったが, 客観的定量化が困難で, カフによる血圧測定の普及とともに, 脈診あるいは脈波からの情報は顧みられなくなっていた. 1980年代後半から, 高精度のトノメトリーセンサーを利用して動脈内圧波形に忠実な脈波を非侵襲的に記録することができるようになり, その波形から客観的な情報の抽出が可能になるとともに, 脈波解析から得られる情報の重要性が再認識されるようになってきた. さらに, 1993〜1994年にKaramanogluら1, 2)の考案した圧伝達関数法(後述)により, 末梢動脈圧脈波波形から推定した大動脈圧波形が解析できるシステムの登場以来, PWAという語はこの解析法を示す用語として使われている3). 後述のごとく, あくまで"推定"であるが故の限界はあるものの, 末梢の非侵襲的計測のみで心臓と直接相互作用する中心大動脈圧の評価を実現した意義は大きい. |