Abstract | 「はじめに」再生医療という言葉の定義や歴史に関しては諸説あるが, 1980年代後半にそれまでの組織工学, 再生生物学の技術を応用した再生医工学と呼ばれる分野が確立され, 90年代に入ってその技術の臨床応用が検討されるに至り再生医療(regenerative medicine)という新たな概念が確立されたというのがひとつの見方である. 90年代後半になって胚性幹細胞(ES細胞)を中心とする幹細胞研究が劇的な進歩を遂げたのに伴い再生医療の研究も爆発的な広がりと進展を遂げ, 今世紀に入る頃には既にヒトを対象とした臨床試験が様々な領域で行われるようになった. 心臓血管外科領域においても血管新生を促進する増殖因子の存在が明らかとなって以来, 血管内皮増殖因子(VEGF), 線維芽細胞増殖因子(FGF), 肝細胞増殖因子(HGF)などによる虚血組織への治療的血管新生の可能性が示唆され, 多くの研究が行われて来た. その中で例えば塩基性線維芽細胞増殖因子(Basic fibroblast growth factor:bFGF)には血管新生angiogenesisおよび動脈形成arteriogenesis(小動脈レベルの血管拡張, リモデリング)を促進する作用が強く, HGFは組織の線維化抑制や抗アポトーシス作用を持つなど, それぞれの増殖因子の持つ特性が明らかにされてきた. |