Abstract | 【目的】この研究の目的は心臓でのplacental growth factor(P1GF)の発現を調べ, それが急性心筋梗塞(AMI)の患者で臨床的に意味があるか検討することである. 【背景】PIGFは単核球を活性化し, 血管新生を誘導することによって創傷治癒を促進することが知られている. しかし, AMIにおいてもPlGFが臨床的に意味を持つかということについてはまだ知られていない. 【方法】55人のAMI患者と43人のcontrolをこの研究の対象とした. AMI後1, 3, 7日目に末梢血を採取し, また急性期に再灌流前後で冠動脈入口部(CAos)と, 冠静脈洞(CS)から血液を採取した. PIGFの心臓での発現様式についてはmouse AMI modelより分析した. 【結果】AMI患者での3日目の末梢血の血清PIGF値はcontrolに比べて有意に高かった. 再灌流直後の血清PlGF値はCSの方がCAosよりも有意に高かった. このことは心臓でPIGFが産生, 放出されたことを示唆している. 3日目の末梢血のPIGF値は, 急性期の左室駆出率(LVEF)と負の相関を示し, 急性期の末梢単核球数のピーク, 慢性期のLVEFと正の相関を示した. PIGFmessengerRNAの発現はAMImodelmouseでsham-operatedmouseよりも26. 6fold多く見られた. 主にPIGFは心筋梗塞区域の内皮細胞内で発現していた. 【結論】PlGFはAMIの急性期に梗塞心筋, 特に内皮細胞において急速に産生される. PIGFは急性期の心筋障害を代償し, 慢性期にLVEFを改善するために発現しているのかもしれない. [成人慢性心不全患者におけるヘモグロビン値, 慢性腎疾患, そして死亡および入院のリスクについて Go AS, Yang J, Ackerson LM, et al. Hemoglobin level, chronic kidney disease, and the risks of death and hospitalization in adults with chronic heart failure:the Anemia in Chronic Heart Fai1ure:Outcomes and Resource Utilization(ANCHOR)Study. Circulation 2006;113:2713-23. 【背景】以前の研究ではヘモグロビン(Hb)値の減少は, 心不全患者において有害事象を増加させるといわれてきた. しかしこの関係が基礎にある腎疾患によるものか, 他に関連した病的状態によるものかは明らかでない. 【方法と結果】慢性心不全患者におけるHb値と腎機能, 死亡, 入院のリスクとの関係について1996年から2002年の間に大規模な調査を行い, 長期的にHb値, クレアチニン値と臨床経過, 治療の特徴を心不全を持つ59772人の成人で得た. Hb値が13. 0〜13. 9g/dlを基準としたときに, 死亡のリスクはよりHb値が低い方で増加していた. Hb値の低下とともにリスクは増加し, Hb<9g/dlではハザード比(HR)3.48, 95%信頼区間(95%CI)3.25〜3.73であった. また, Hb値が17.0g/dl以上のときも死亡リスクの増加と関係があった(HR1.42 95%CI1.24〜1.63). 糸球体ろ過率(GFR)は≧60ml/min/1.73m2の人を基準としたとき, GFR45未満の人で死亡リスクは増加した. 同様にGFR低下に伴いリスクは増加し, GFR15以下でHR3.26, 95%CI3.05〜3.49, 透析患者ではHR2.44, 95%CI2.28〜2.61であった. その関係は入院のリスクでも同様であった. その結果は左室収縮能が正常でも, 低下していても変わらなかった. またHb値は腎機能がどのレベルであっても同じ結果を得られる独立した因子であった. 【結論】Hb値が低いこと, もしくは非常に高いことと, 慢性腎疾患は心収縮能の程度に関わらず, 心不全における死亡と入院のリスクを増加させる独立した因子である. Hb値を上げることで, 慢性心不全患者の予後が改善するかを評価することが今後必要である. |