Authors | 吉澤誠1), 田中明2), 小川大祐3), 笠原孝一郎3), ポール・オレガリオ3), 白石泰之4), 関根一光4), 山家智之4), 仁田新一4) |
Abstract | 「はじめに」人工心臓は, 自然心臓を切除置換する完全人工心臓と, 自然心臓を切除せずにその補助をする補助人工心臓に分けられる1). 完全人工心臓は非常に重篤な心臓疾患に対しても適用できるが, その拍出量を時々刻々変化する生体の生理的要求に一致させることが難しい2, 3). 一方, 補助人工心臓では, ポンプ機能が衰えているとはいえ残存する自然心臓が循環制御の一部を担ってくれると推測されるので, 目標循環量をどう設定するかという問題をある程度回避でき, 完全人工心臓より有利であるとされている. 補助人工心臓も, 駆出と充満を交互に繰り返す拍動流型と, 流量が途切れることのない遠心ポンプなどを使う定常流型に分けられる. 拍動流型は特に体内埋め込みを考えた場合, 構造が複雑で高価である. これに対し定常流型は, 溶血を起こしやすいが, 構造が簡単で小型化も容易であるという利点があるため, 将来的な普及に期待が高い. 本稿では, 定常流型補助人工心臓の循環制御が, 完全人工心臓などと比較して実際に簡単なのかどうかについて議論するとともに, 循環制御の問題を扱うには自己心臓と人工心臓が共存する複雑な血行力学的な動作を解析する必要があることについて解説する. |