Abstract | 「はじめに」最近の老年医学研究により, 加齢に伴う動脈圧反射障害が起立性低血圧を惹き起こし, 廃用症候群(いわゆる寝たきり)の重要な誘因であることが明らかになりつつある. また, 中高年を好発年齢とする進行性の神経変性疾患, 例えば, シャイ ドレーガー症候群, 多系統萎縮症, あるいは, 外傷による高位脊髄損傷などでは, 生命維持に極めて重要な血管運動中枢が侵されたり, 交感神経遠心路障害により, 圧反射機能が廃絶するため, 重度の起立性低血圧や起立性失神を起こすようになる. 多くの場合最終的には, 寝たきり状態となる1〜3). このように起立性低血圧は, 生活の質を著しく低下させる重要な病態であるが, 多くの場合, 根治的治療法はない. これまでに, 薬物療法と心臓ペースメーカによる頻拍ペーシングが試されてきたがいずれも無効であった4, 5). 血管収縮薬やミネラルコルチコイドによる薬物療法の場合, 仮に, 起立時の低血圧を防止することに成功しても, 臥位時の重症高血圧をまねくことがあった. また頻拍ペーシングは, 動脈圧調節の前負荷(中心静脈圧)依存性を増強し, むしろ起立性低血圧を悪化させることがあった. |