Abstract | 「はじめに」急性心筋梗塞の治療として, 臨床的には閉塞冠血管の再疎通を図る冠動脈血栓溶解療法, 冠動脈形成術を施行するが, かかる再疎通療法にても十分な梗塞サイズ縮小, 心室リモデリングの改善, 慢性心不全の抑止が得られないのが現状であった. そこで, 10年以上前から, 強い心筋保護作用を有する虚血PC現象が注目され, 虚血性心疾患の新しい治療法の確立のため, 動物モデルを利用した基礎的研究がグローバルに開始された. PCについては, 1986年Charles Murrayらが, 犬の動物モデルで, 初めて虚血PC現象を発見した. 彼らの報告は, 5分間虚血, 再灌流の前操作を4回繰返した後, 冠動脈を結紮し, 40分間冠血流を遮断したPC群の梗塞領域を計測したところ, 前処置のない対照群(約28%)に比べて, 著明な心筋梗塞縮小効果(約10%)を認めた内容であった. 「心筋プレコンディショニング現象(PC)とは」PCとは, 単回あるいは数回の短い心筋虚血の先行により長時間虚血による可逆性, 不可逆性障害が軽減され, 虚血耐性, 心筋保護作用が成立する現象であり, 疾患, 病態像を表すものではない. |