Japanese
Title虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する僧帽弁形成術の効果
Subtitle文献紹介 I
Authors夜久均, Mihaljevic T, Lam B-K, Rajeswaran J
Authors(kana)
Organization京都府立医科大学大学院医学研究科心臓血管・呼吸器外科学
Journal循環制御
Volume29
Number1
Page84-84
Year/Month2008/5
Article報告
Publisher日本循環制御医学会
Abstract筆者らは虚血性僧帽弁閉鎖不全に対して, 病態の基礎にある左室の問題の解決無しには弁輪縫縮術のみでは遠隔成績の向上は認めなかったと報告した. 虚血性心筋症において僧帽弁閉鎖不全はその予後を悪くする予測因子となっているが, 冠動脈バイパス術と共に僧帽弁閉鎖不全も直すと予後が改善するかどうかはまだ明らかにはなっていない. 1991年から2003年の間に虚血性僧帽弁閉鎖不全が中等度以上の390例の患者のうち, 290例に冠動脈バイパス術と共に僧帽弁輪縫縮が, 100例に冠動脈バイパス術のみが行われた. それぞれの群は患者背景, 病変枝数, 局所壁運動, 定量的心エコー評価に対してマッチングをされ, 生存率, 僧帽弁閉鎖不全の程度, NYHA心不全クラスの比較がなされた. 冠動脈バイパス術のみを行った群の1年, 5年, 10年生存率はそれぞれ88%, 75%, 47%, 冠動脈バイパス術に僧帽弁輪縫縮術を加えた群ではそれぞれ92%, 74%, 39%で, 両群間に有意な差は無かった(p0.6). 側壁の高度な運動異常(p=0.05), 心電図で側壁誘導のST上昇(p<0.004), 高いQRS電位加算(p<0.0001)を認めた患者では死亡率が高かった. 冠動脈バイパス術のみを行った群では, 1年後に中等度以上の僧帽弁閉鎖不全が残った割合が僧帽弁輪縫縮を加えた群に比し多かった(48%vs12%, p<0.0001). NYHAクラスは両群で改善し(p<0.001), その後も改善し続けた. 5年後のNYHAクラスがIIIあるいはIV度の割合は, 僧帽弁輪縫縮を加えた群で23%, 冠動脈バイパス術のみの群で25%であった. 冠動脈バイパス術に僧帽弁輪縫縮術を加えた群では, 冠動脈バイパス術単独群に比し, 術後早期の僧帽弁閉鎖不全の程度, 心不全の程度をより改善したが, 遠隔期の心不全の程度や生存率には差が無かった. 高度な虚血性僧帽弁閉鎖不全の患者では, 左室の根本的な病態を解決せずに僧帽弁輪縫縮術だけでは長期臨床成績を向上させることは困難である.
Practice基礎医学・関連科学
Keywords