Abstract | 「NASHの疾患概念」脂肪性肝疾患(Fatty liver disease)は, 肝細胞に中性脂肪が沈着して, 肝疾患を来たす疾患の総称である. 脂肪滴を伴う肝細胞が30%以上認められる症例は画像診断でも脂肪沈着症(Steatosis)が強く疑われ, 臨床では一般に脂肪肝と呼ばれている1). 脂肪性肝疾患は, 以前はアルコールによる肝障害が多かったが, 糖尿病や肥満によっても同様な肝障害が生じることがわかり, 1986年, Schaffnerは, 飲酒歴(20g以下/日)がないにも拘らず, アルコール性肝障害に類似した肝組織像を示す多岐の成因による疾患群をまとめて非アルコール性脂肪性肝疾患(Non alcoholic fatty liver disease;NAFLD)と報告した2), これには1980年, Ludwigらが報告した非アルコール性脂肪肝炎(Non alcoholic steatohepatitis;NASH)が含まれる. 1980年, Ludwigらは非飲酒者で, 大滴性脂肪肝, 肝細胞風船様変性が主の(Balooning hepatocyte), 炎症性細胞浸潤, 中心静脈周囲の肝細胞周囲性線維化, 時にマロリー体(Mallory body)を有する例をNASHと提唱した3). NAFLDは予後良好な単純性脂肪肝(Simple steatosis;SS)と進行性のNASHを含む疾患概念で, NASHはNAFLDの重症型と考えられおり, NAFLDの約10%をNASHが占めると言われる. |