Abstract | 「はじめに」近年のCT(computed tomography)の発展は目を見張るものがある. 特に, 複数の検出器を搭載したマルチスライスCTの進歩は, それを専門に扱う我々放射線診断医にとっても驚異的ですらある. マルチスライスCTの歴史は4列の装置が発表された1999年に始まった. そして, 早くもその2年後の2001年には16列へ, さらに2004年には64列へと加速度的に進歩した. この進歩の恩恵を最も受けたのが心臓領域であり, 特に冠動脈のCT診断が可能となったことは, 侵襲的な心臓カテーテル法に代わり得る非侵襲的画像診断法が登場したことを意味している. 本稿では, 冠動脈疾患を中心にマルチスライスCTの現状と展望について解説する. 「マルチスライスCTの多列化と心臓の関係」マルチスライスCTの臨床面での特徴は, (1)速く, (2)薄く, (3)広くの3点が同時に得られることにある. 例えば脳血管の全体像を(広く), 1mm程度の非常に薄いスライス厚でも(薄く), 造影剤のファーストパス状態で, 言い換えると静脈の混入のない動脈相の状態のうちに撮影することができる(速く). そして, 得られた高精細の画像データを高速処理する装置(ワークステーション)を用いることで, 空間分解能に優れた脳動脈の3次元画像を得ることもできる. |