Abstract | 「はじめに」我が国で最初に開発された透析液は1965年の重曹透析液であったが, Caイオンと重炭酸が結合して沈殿を起こすことによるCa値の不安定さが問題であった. その後, フランスのMionらにより開発された酢酸透析液が, その安定性からくる使い易さにより1970年代に国際的に普及した1). しかし, 酢酸のもつ末梢血管抵抗減弱作用などによる治療中の血圧低下, 全身倦怠感, 頭痛, 足の痙攣などのデメリットが患者の生活の質を落とすという問題を残した. 1980年代に入り, 透析液と重曹を分けて保存し, 透析液供給装置内で混合することによりCa濃度低下を抑えた重曹透析液が普及し, 瞬く間に酢酸透析液に入れ替わった. その後約30年に亘り重曹透析液が主な透析液としての役割を果たしてきた. 近年, 透析患者の高齢化と糖尿病透析患者の増加に伴い, 我が国における重曹透析液中に8〜10mMの濃度で含まれる酢酸が治療中の透析患者の症状の発現に関与するのではないかという疑問が生じてきた. また, 1983年にHendersonらにより提唱されたサイトカイン仮説から, 低濃度とはいえ一定濃度の酢酸ナトリウムを含む透析液を使用することはサイトカイン産生を促進し, 慢性炎症に伴う透析合併症を進展させる可能性が指摘された. |