Abstract | 我が国でも近年, 公共の場に自動体外式除細動器(AED)が設置されるようになり, 市民による除細動可能な生活環境が整備されつつある. しかし, この全国的なAEDの普及が実際に院外心停止患者の蘇生率を向上させているかについては明らかでない. 総務省消防庁は2004年から院外心停止患者の蘇生に関する全国的なウツタイン登録を行っている. 本報告は, この登録の中から, 2005年1月から2007年12月までの間に, 救急隊到着までに院外で心停止を起こし救急隊によって処置が行われ, 病院へ搬送された人のうち, 18歳以上の心停止者を対象に行われた前向き観察研究の結果である. この3年間に18歳以上の心停止者のうち, 心臓が原因の心停止は16,827人でそのうち, 発見者による目撃のあった心停止は55,271人だった. 目撃のあった心停止者のうち心室細動で心停止となったのは12,631人であった. そのうち, 救急隊到着までに市民によるAEDが行われたのは462人だった. 462人のうち, 目立った神経学的異常のない1ヵ月生存率は, 3年間全体で31.6%(2005年は24.4%で2007年には34.3%と上昇)と良好だった. 市民による除細動率はAEDの普及とともに増え, 2005年の1.2%から2007年には6.2%に上昇した. また除細動までの平均時間は3.7分から2.2分へ短縮した. 我が国における市民による除細動の普及が院外心停止患者の蘇生率を向上させていることが示された. |