Abstract | 「Kitamura T, Iwami T, Kawamura T, et al: Conventional and chest-compression-only cardiopulmonary resuscitation by bystanders for children who have out-of-hospital cardiac arrests: a prospective, nationwide, population-based cohort study. Lancet 2010; 375: 1347-54.」 本報告は, 前出の我が国の成人の蘇生に関する報告と対をなす小児の蘇生に関するもので, 総務省消防庁が全国的に行った院外心停止患者の蘇生に関するウツタイン登録の中から, 18歳未満の小児に関するデータを調査したものである. 2005年1月から2007年12月までの間に, 救急隊到着までに院外で心停止を起こし, 救急隊によって処置が行われ, 病院へ搬送された人のうち, 18歳未満の心臓が原因の心停止者を対象に行われた前向き観察研究の結果である. 特に本研究では, 院外心停止小児に対する蘇生が通常の心肺蘇生法(呼気吹き込みを含む)で行われた場合と胸骨圧迫のみの蘇生が行われた場合の違いを検討している. 3年間で該当する18歳未満の院外心停止小児は5,758人であり, 5,573人に蘇生が試みられた. 心臓以外が原因の心停止は3,675人(71%)であり, 1,495人(29%)は心臓が原因の心停止と判断された. 2,439人(約47%)が近くにいた発見者によって心肺蘇生(CPR)を受けた. CPRあり群はCPRなし群(2,719人)に比べ良好な神経学的予後が得られた(4.5% vs 1.9%). CPR実施の調整オッズ比は4.17であった. 特に1歳から17歳までの心臓以外が原因の心停止児では, CPRあり群がCPRなし群より神経学的予後の有意差が顕著だった(5.1% vs 1.5%でオッズ比4.17). CPRあり群の中で, 1,551人(30%)が通常のCPRを受け, 888人(17%)が胸骨圧迫法のみを受けた. 心臓以外が原因の心停止小児(1歳から17歳)では, 通常CPRは胸骨圧迫法単独より, 良好な神経学的予後が得られた(7.2% vs 1.6%, オッズ比5.54). 心臓が原因の心停止小児(1歳から17歳)では通常CPR法と胸骨圧迫単独法では有意な差は認められなかった. 全国的レベルでの本調査から, 院外心停止小児(特に1歳以上)では心臓以外が原因の心停止が多く, 呼気吹き込みを含む通常のCPR法が胸骨圧迫のみよりも有効であることが明らかになった. |