Abstract | 急性心筋梗塞症の発症例は全世界で年間約5000例/百万人であり, 約2000例/百万人は, 心機能不全により死亡するといわれている. このうち, 約500例/百万人(有病率の約10%)は, 各種機械的補助循環により, 救命可能な症例であろうと予想されている1). 各種薬剤, 又は従来の治療法が奏功しないこれらの心臓を補助し, 機能回復が期待できなければ, 人工的に置換したいという夢は, 過去30年以上に及ぶ年月の末, ようやく我々の前に実現しようとしている. 図1に示すように現在我々が臨床的に適用可能な機械的補助循環装置(Mecanical assist device)は, 大動脈内バルーンパンピング(IABP), 補助人工心臓(Ventricular assist device, 以下VAD), 完全人工心臓(Total artificial heart, 以下TAH)である. 完全人工心臓は恒久的な植え込みとしては未だ研究段階にあるため, 一時的な使用が中心となる. したがって, 完全人工心臓により補助された症例の大部分はブリッジバイパスを経て, 心臓移植の適応となる. ポンプ失調を有する種々の病態(急性心筋梗塞, 開心術後心不全, 心筋症など)から, 血圧が60mmHg以上で, 心拍出量が1.5l/min/m2以下の重篤なポンプ失調に対してはIABP又はVADを選択することにより血行動態の改善を計り, さらに, 心拍出量, 血圧の改善を認めず, 流量補助が必要となる重症例に対しては, 補助人工心臓が適応となる. |