Abstract | 「はじめに」血液のpHは血管緊張に影響を及ぼす. アシドーシスにより血管は弛緩し, アルカローシスにより収縮する1, 2). その主なメカニズムとして, 血管平滑筋細胞の電位依存性カルシウムチャネル機能のpH依存性が報告されている3). 一方, 細胞内pHは細胞外pHの変化に影響されるが, 血管平滑筋細胞では他の平滑筋細胞や心筋細胞に比べて細胞外pH変化時の細胞内pH変化がより急速に起こる4). さらに様々なアゴニストにより細胞が刺激された際に, 形質膜のNa+-H+交換系(Na+-H+exchanger, NHE)の活性が亢進し, ナトリウムイオン流入とプロトン排出が同時に起こる結果, 細胞内pHが上昇する. 本総説では血管平滑筋および内皮における細胞内アルカリ化と血管機能との関連性について概説する. 血管平滑筋の収縮機能と細胞内pH NHEはアシドーシス時に作動する主な細胞内pH調節メカニズムとして重要であるが, NHEのアイソフォームの中でも形質膜で恒常的に発現しているNHE-1活性は, 受容体刺激時のフォスファチジルイノシトール水解反応とリンクして起こるプロテインキナーゼC活性化により上昇することが知られている5). また, 最近ではMAPK(mitogen-activated protein kinases)やRTK(receptor tyrosine kinases)がNHE-1の活性化に重要であるとの報告がある6, 7). さらに, NHE-1はカルモジュリン結合部位を有し, 細胞内カルシウムイオンの上昇によっても活性化される8). |