Abstract | はじめに 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は, 疫学的に高血圧の合併頻度が高いことが報告されている1, 2). 睡眠からの覚醒反応とそれに伴う交感神経系の活性亢進のために高血圧になるといわれている3〜6). 生化学的な観点から見ると, SASにおけるエンドセリン1血中濃度の増加7), 一酸化窒素の産生能の低下8, 9), 細胞接着因子の産生増加10)などが, 安静時における血管抵抗の亢進や血管開存度の低下に寄与し, 血圧上昇を来たすものと思われる. 運動中の血圧応答は心不全重症度や生命予後と関連する11). 低強度運動中は, 骨格筋ポンプの動因による静脈還流増加に伴う前負荷の増大, および頻脈による心拍出量の増大によって血圧は維持される. 中等度以上になると, 交感神経活性が亢進し, 心収縮機能の促進と非運動筋血管の収縮が起こって至適血圧に調節される. また, 一酸化窒素の産生異常は, 運動中の血管拡張応答異常にも関与する可能性があるとも報告されている12). しかし, これまで, 本邦においてSASと運動中の血圧応答を検討した報告はない. そこで, 今回, SAS症例における運動負荷試験中の血圧応答につき検討した. |